黒服堕天録TAKAUJI〜尊氏〜
プロローグ《堕ちるが当然…尊氏》
「自分の流儀で地獄に堕ちる権利は、誰にも奪えない」(ロバート・フロスト)
〜2004年3月〜
「何故…何故、俺には巡ってこない…」
男は一心不乱にレバーを叩いていた
「がっ…!ぐっ…がっ!!降臨しろ!中段チェリーッ!!!」
液晶に映るケンシロウに祈りを込める…
「これが最後の千円…降臨しろ中段チェリー!撃て百烈拳!!昇天せよっ!ラオウッ!!!」
願うは乾坤一擲の大当たり…
バトルボーナス…
ラオウ昇天…
一撃万枚ッ…
「リンゴ…赤強ザコ…赤大オーラ…
神よ…俺を祝福しろッ!」
…が、駄目!!
願い虚しくメダルは台に吸い込まれていく…
後に尊氏は述懐する…
「ギャンブルに於いて、堕ちていく人は、希望が見えるとソレ(希望)に向かって突き進んでしまうもの…
例えそれが、『か細い希望』だったとしてもな…
そして、ソレ(堕ちること)がいつしか、快感に変わってしまう
ギャンブルがドラッグに形容されるのも頷けるわな」
無情にも最後のメダルを吸い込まれる…
男が呟く「…チキッ」
ガンッガンッガンッガッ!
男は台を強打し始めた…俗に言う『台バン』
「インチキッ!インチキッ‼︎この店は遠隔だぁ!!」
勝負に負けた男の情けない兇行…
「お客様!」
店員による強制退店
無様…
「…ちくしょうッ」
この無様な男の名を尊氏(たかうじ)という
この物語は、ギャンブル狂(パチンカス、麻雀猿)の彼が、ネオンライトに惹かれ、ネオンライトの裏側の闇でスキップをしていく物語である
この物語はフィクションです!