【黒服堕天録TAKAUJI〜尊氏〜】
第1章《羨望、渇望、絶望』
第2話『風穴』
「尊氏ちゃん〜!ずっと雀荘で働くつもりなの〜?」
麻雀を打ちながら尊氏に聞く男
この男の名は八州男
尊氏の働く麻雀荘に毎日のように打ちに来る常連客だ
八州男は大柄で、強面風のオッさんだ
キャバクラの経営をしているらしく、毎日、営業終了後の朝方来客をする
強面風なのだが、『気さく』『愉快』を絵に描いたような人だった
八州男の質問の意図が理解できない尊氏
尊氏「どーいうことっスか???」
八州男「どーいうことも何も、そのまま
の意味よ。雀荘の店員さんをずっとやるのかなって」
尊氏は考えた…
(このまま雀荘の店員を続けて、借金に塗れて…このままじゃ麻雀の修行をしてるうちに、人生が詰んでしまう…)
その頃の尊氏は限界を感じていた
少ない手取りの中、生活費に追われ、借金に追われ、それを賄う為にパチ屋に行き…負ける
『このままの負のスパイラルから抜け出さないと…他のバイトでもしようかな…』
金の無い日々、楽しいはずの麻雀も仕事で目減りしていく給料にストレスを感じる日々
やり場の無い憤り
嫌気がさしていた
抜け出したかった
尊氏は仕事中だということを忘れたのか、いつもの笑顔とは違う、重い表情を見せた
尊氏「ずっとはやらないっスね…今も新しい仕事を探してるっていうか…」
八州男「ちょうどいいわ!良かったらだけど仕事紹介しようか?」
拍子抜けするほど簡単に言う八州男に尊氏は驚いた
尊氏「仕事を紹介って…?
」
八州男「ここは尊氏ちゃんの職場でしょ?こんなとこで話すことじゃないでしょ。次の休みにでもウチの店に来なよ。」
尊氏「そうっスね!」
八州男「おっ!その牌ローンッ!」
会話を霧に尊氏の打牌を和了する八州男
八州男「満貫だよー!油断したね!」
笑顔で話す八州男に尊氏は苦笑い
尊氏「ヒドイっスわ!会話で油断させてダマテンは無いっスよ!」
八州男「勝負の世界は非情なのだよ…!でも、話はホントだからね。月に25万くらいは稼がせてあげるよー」
ざわ…
月に25万…
尊氏の現状からしたら信じられないような巨額の金!
雀荘の給料、他の求人が霞むような金額!
揺らぐ心…
「月に25万も給料が貰えるなら、今の借金生活、負のスパイラルからの脱出、俺の人生に風穴を空けられる…」
尊氏の目線は真っ直ぐ、そして輝く眼光で八州男に告げた…
尊氏「明日休みなんで、明日お店に伺います❤️」
to be continued